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元関西ジャニーズJrの内 博貴が主演して、彼の半生を描いた音楽劇
「ザ・オダサク」が5月に舞台上演されることになったという。
織田作之助といえば、太宰治、坂口安吾らと”戦後3デカダンス”と並び称された小説家で、
大阪の下町を舞台に数多くの短編小説を著し女士脫髮ている。

私が大学を選んだ理由の一つは、先輩に当たる
当時、文壇で華々しかった司馬遼太郎や陳舜臣に魅かれてのこともあったが、
それよりも大学の立地場所が、
織田作の小説の舞台上に建っているような環境が魅力だったことが影響している。

生国魂(いくたま)神社や四天王寺、その辺りにひしめく人情長屋の雰囲気を味わったり、
ちょっと足を伸ばして彼の小説に登場する難波辺りにある「自由軒のカレー」や
「しる一」、法善寺横町の「正辨丹吾亭」などを食べ歩いたものだった。

彼の小説に『わが町』というのがある。
ご存知も方も多かろうと思うが人力車夫の「ベンゲットの他(た)~やん」
を主人公にした小説。
その小説の中には長屋の一人一人の人物が生き生きと描き出されている。
彼は、おそらくバルザックの影響を受けていたのだろうと思う。
バルザックの小説は、人物を克明に描き、
まるで、生きて街そのものがあるように表現している。
病床にあった時に、彼は自分が書いた小説の名医の名を呼ぶほどに
街を描ききっていた。

架空の小説の中ではなく、
私が行きつけている地域を『わが町』と呼びたいと思うほど、
そこに住む一人ひとりに限りない愛着がある。
たとえば、よく行く通りにある駄菓子屋。
よく太った店の主人がいて、彼が留守の間は、丸刈りの息子が
「じゃりんこチエ」のように店番をしていたりする。

その並びにある小さな昔ながら酒屋。
無愛想な初老の店主。そして、よく笑う小柄な奥さん。
この酒屋に置いているワインと言えば、千円あまりの価格帯の何とも安いモノばかり。
だけども、ここのワインにハズレがない。
店の主人が、一本残らず全て試飲して、その眼に叶ったものしか入れていないと
いつか、奥方が話してく中藥脫髮れた。
酒屋の店主の無愛想な中には、そのような細心の思いが隠されている。

先日、その駄菓子屋が閉店した。
そして、今日、この酒屋が閉店すると聞いた、、。
人情味溢れる『わが町』から、
一つずつ、佇(たたず)まいと、登場人物が消えていく。